AD Newsアンチ・ドーピング通信

外国人陸上選手 ドーピング違反事例

更新日:2024年8月8日

[参照事例] 日本アンチ・ドーピング規律パネル決定(2023-003事件)
以下、簡潔に内容をまとめております。詳細は原本をご覧ください。

事件の経緯

①違反者Aさんは、自主トレーニングのためにケニアに帰国した際に胸の痛みを感じ、友人に紹介してもらった現地の診療所で診察を受けた。薬を購入する際に自身がアスリートであることを医師に伝えている。

②医師から処方される際に「痛み止めはドーピング違反にならない」という回答があったが、その医師はアスリートに対して薬を処方した経験がないという認識をもっていたが、自身がアスリートであること、薬にはドーピング禁止物質が含まれていないことを明確に回答が得られたことから、医師の指示に従い購入・使用に至った。

③しかし、医師から処方してもらった薬は禁止物質であるプレドニゾロンを主成分とするものであり、その商品名にも「PREDNISOLONE」と表示されていたが、Aさんにはその認識はなく使用してしまっていた。

④日本に帰国し競技会当日の朝、再び胸の痛みがあったため、痛み止めにケニアから持ち帰っていた「PREDNISOLONE」を服用し、競技会時に行われたドーピング検査で陽性となった。

本件のポイント

第三者に確認せずに薬の服用にいたったこと

外国人選手に対するアンチ・ドーピング教育の課題が浮き彫りになるような事例となりました。

選手へのアンチ・ドーピング教育は年に1〜2回ほど行われていたようですが、配布資料や説明は、すべて日本語のみであり、Aさんが理解できるようなものではなかったようです。

危機感はあったものの、選手はどうすれば良いのかわからなかったため、薬を処方した医師を信じるしかなかったということがみてとれます。

薬に禁止物質が含まれていないかの確認を選手自身が行なっていないこと

医師から処方された薬にドーピング禁止物質が含まれていた場合でも、選手自身が薬の確認を行なっていれば、防げたかもしれません。

このように、医師やチームや大会のドクターから処方された薬にドーピング禁止物質が含まれていて違反になるケースは、多くはないものの世界でも事例があります。

最終的な責任は選手が負うことになります。

もし信頼している人から受け取った薬であったとしても、二重・三重チェックをすることで、ドーピング違反になることの抑制に繋がります。

必ず、使用する医薬品の中にドーピング禁止物質が含まれていないことを自身で確認するようにしましょう。

さいごに

Aさんは、2016年に来日してから今回の違反まで通院をしたことがなく、ドラッグストアで薬を買うなどの行為もしたことがなかったなど、様々な状況を考慮した結果、資格停止期間が3ヶ月と比較的短い決定となりました。しかし、全ての事例において今回のような決定がなされるわけではないことが決定書の中で言及されています。

外国人選手へのアンチ・ドーピング教育は以前より課題とされており、今回はその課題が顕著に現れたことと、選手自身が薬の中に禁止物質が含まれていないかの確認することの重要性について伺える事例でした。

医薬品を調べる方法は、Global DROとdinxがあります。どちらも併用することで確実に意図しないドーピングを抑制することが可能です。
本件の場合は、Aさんが外国籍なところから、英語対応や海外の医薬品検索にができるという点でGlobal DROを使用して検索していれば、防げていた事例かもしれません。

dinxの場合は、日本の医薬品を商品名から検索が可能なため、専門的な知識が必要なく活用することができます。
ご自身にあったアンチ・ドーピングツールを使用して、ぜひアンチ・ドーピングにお役立てください。